介護事業者支援センター
登録型ホームヘルパーの特殊性と就業規則
訪問介護事業の中核を担っているのが「ホームヘルパー」です。
そのなかでも、登録型ホームヘルパーは、「訪問介護」に特有なサービス提供というニーズにこたえるためにできた雇用・就労形態です。
ところが、その特殊性のある就労形態であるが故に、労働契約がなされていなかったり、就業規則が整備されていなかったりする事態が多く見受けられます。

近年、介護事業者の労働基準法違反の比率が高いというデータをもとに、労働基準監督署の監査の目が介護事業所に向けられはじめています。
そんななかで一番 指摘されやすいのが、やはり、就業の特殊性にある「登録型ホームヘルパー」の労働契約書と就業規則なのです。

我々専門家は、登録型ホームヘルパーの「労働者性」は、@雇用・被雇用関係にあるかどうか A誰かの指揮命令ではなく、独立して事業を行っているかどうか Bその報酬は「労働賃金」か「請負代金」かの3つの視点で総合的に判断することになります。

この3つの視点で「登録型ホームヘルパー」の業務を見ると、それぞれに事業所に登録し、雇用されていること、事業所の指揮命令下にあること、「時間」「労働の質」により、時間給(月給)で「賃金」が支給されていること等をみると、「労働者性」が極めて高いといえます。つまり、労働基準法その他の労働法令の適用を受けることになるのです。 ただ、非常勤の登録型ホームヘルパーのように定年制や解雇という概念が当てはまりにくい就労形態の場合は、労働法令の全面適用とならないこともあるので、まさに特殊な就労形態と言えるのです。
そこで、ここでは登録型ホームヘルパーの就業規則のいくつかの条文例をとりあげてみたいと思います。
就業規則上「始業・終業時刻」はどんな形式になるのでしょうか?
(始業・終業時刻)  
始業時刻は、月間勤務表に定める各勤務日の訪問先(利用者)の訪問時刻とし、終業時刻は、その日の最後の訪問先(利用者)の退出時刻とする。
ただし、利用者の都合等のため、または事業所への立ち寄り等のため事前にこれを繰上げまたは繰り下げることができる。
定年に関する規定はどうなるのでしょうか?
登録ホームヘルパーは、有期雇用契約であるため「定年退職」の概念はありません。
そこでこんな規定を設けることもできます。
(勤務最高年齢)  
登録ホームヘルパーの勤務最高年齢は満70歳とし、70歳に達した日の属する年度の3 月31日を雇用契約終了の日とする。
勤務時間に関しては、法定労働時間以内になるように次のように定めようにします。
(勤務時間)  
勤務時間は、1週40時間未満とし、休日は4週を通じて4日以上となるように月ごとに 定める。なお、1日の所定労働時間は8時間以内とする。
登録ホームヘルパーは、休日を特定しにくい就業形態であるため、休日を次のように定めるようにします。
(月間勤務表による勤務および休日)  
1.
各人の勤務日および勤務時間ならびに月間所定勤務時間数は、本人の就労可能申告書を考慮して、月間勤務表において訪問先利用者と併せて決定する。
2.
月間勤務表で勤務日と定められた日以外は休日とする。
登録型ホームヘルパーには有給休暇はあるのでしょうか?
登録ホームヘルパーは、元来、所定勤務日があらかじめ固定されず、かつヘルパー自身がある程度、勤務日を設定あるいは変更できる雇用形態においては「休暇」の概念がないように思われます。したがって、「労働基準法」の適用が疑問視されることもあります。しかしながら、長期間の継続勤務の実態が常態としてあること等を考慮して「年次有給休暇」の制度を設け、継続勤務に報いることも必要ではないかと思われます。
そこでこんな規定を設けてみます。
(年次有給休暇)  
6ヵ月間継続勤務し、各月の月間勤務表で定められた所定勤務日数の8割以上出勤した登録ホームヘルパーに対しては、次の通り年次有給休暇を与える

週所定
勤務時間
週所定
勤務日数
1年単位の
労働日数
勤務年数および年次有給休暇日数
6ヵ月 1年
6ヵ月
2年
6ヵ月
3年
6ヵ月
4年
6ヵ月
5年
6ヵ月
6年
6ヵ月以上
30時間以上 -
10
11
12
14
16
18
20
30時間未満 5日以上 217日以上
4日 169〜216日
7
8
9
10
12
13
15
3日 121〜168日
5
6
6
8
9
10
11
2日 73〜120日
3
4
4
5
6
6
7
1日 48〜72日
1
2
2
2
3
3
3


このように登録型ホームヘルパーは、その特殊性のある就労形態であるが故に、特に就業規則をきちんと整備することで、安心した労働条件を従業員の皆様に提供することが事業主にとっての重要な経営課題の1つであるのです。

 

   
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