コラム

コラム2 社内規定と社会保険の関係

1.住宅手当をやめ、法人契約をして借上社宅にしてみる!

一見 なんのことかよくわからないと思われるかもしれません。
賃貸住宅にお住まいの経営者が、起業時に事務所と自宅を併用して使用するということは よくある話です。 そして、この対策の根底には、次のことが影響しているのです。

まず、社会保険料の算定の基礎になる報酬には、賃金、給料、手当などといったどんな名 称であっても、被保険者が労務の対償として受けるものすべてを含みます。
基本給は当然のこと、○○手当といった金銭で支給されるものだけでなく、通勤定期券な ど、金銭によらず、現物で支給されるものも報酬の対象となります。

たとえば、 月収が40万円で家賃が10万円の人が、個人的に住宅会社と貸貸借契約を結び、会社から家賃10万円の半額である住宅手当5万円の支給を受けている場合を考えてみます。
月収40万円には、住宅手当5万円が含まれているので基本給は35万円と考えられます。 
つまり基本給35万円+住宅手当5万円=月収40万円という訳です。
社員はこの月収40万円の給料から住宅手当分5万円+自己負担分5万円と併せて家賃の合計10万円を支払うことになるので、家賃控除後の手元の残り額は30万円となります。


住宅手当をやめ、法人契約をして借上社宅にしてみる!のイメージ図

さて、ここで、社会保険料を考えてみましょう。
住宅手当というのは、社会保険料の算定対象となっていますので、支給額40万円に対して、社会保険料を算定します。

では借りていた住宅を会社が借り上げて社宅とした場合はどうでしょうか?
家賃10万円は会社の負担となりますが、その家賃を、「本来支給していたはずの住宅手当」と同じ金額の5万円を毎月、本人から徴収することになります。
本人は35万円の基本給から家賃5万円(従来と同じ住宅手当支給相当分)を会社(借主)に支払いますので、手元の残り額は30万円となります。
つまり、家賃控除後に自分に残るお金の額30万円は同じです。



住宅手当をやめ、法人契約をして借上社宅にしてみる!のイメージ図


しかし、決定的に異なるのは、社会保険料の額なのです。 このような対策を講じた場合は、社会保険料を計算する報酬月額は基本給35万円で算定することになるのです。
つまり、社会保険料を算定する基礎が、35万円で計算するのか40万円で計算するのかの違いが出てきます。そして、この対策は、所得税や住民税にも影響してくるため、年間数万円の違いが出てくるのです。
全従業員に適用すると莫大な金額になることがおわかりですよね。

 (注)なお、実際は、社宅は現物給与扱いであり、都道府県ごとに評価されている社宅の現物給与額を計算し、その現物給与額から本人負担額を差し引いた額を標準報酬月額に付加する必要がありますので標準報酬月額が多少上がる可能性がありますのでご注意ください。



2.賞与を出してから会社を辞める社員がいるなら、退職日を月末から1日だけ早めてもらう。

賞与を7月1日に100万円もらい、7月31日に退職した場合を考えてみましょう。   
賞与の社会保険料は本人負担額としては、
100万円 X (健9.48%+厚16.412%)/2 = 129,500円 になります。   
では、1日早めて、退職日を7月30日にしたらどうでしょうか?   
賞与の社会保険料は0です。
え!なんで? と思うかもしれません。
理由は、「社会保険料は、資格を喪失した月の前月までを被保険者期間としてその各月にそれぞれ徴収する」というものだからです。
ここでのポイントは、「資格喪失日=退職日の翌日」という点です。

7月31日にやめた人は、資格喪失日は、退職日の翌日なので8月1日です。
つまり、社会保険料は、8月の前月である7月まで徴収されます。

では、7月30日に退職した人はどうでしょうか?
7月30日にやめた人は、資格喪失日は、退職日の翌日なので7月31日です。
つまり、社会保険料は、7月の前月である6月まで徴収されます。
これは7月の賞与に社会保険料を支払う必要がないことを意味しているのです。


3.「選択制」確定拠出年金を導入する!

これは給料の一部を確定給出年金として積み立てる方法です。
たとえば、社員の給与が基本給30万円だった仮定します。   
この基本給を「確定拠出年金の掛け金選択枠」と「新基本給」のふたつの項目に分けるのです。
もちろん企業がその社員に支払う総額は30万円のままです。
項目として、確定拠出年金の掛け金選択枠は、従業員が自らの意思で将来のための貯 金と決めた金額であり、新基本給は現在の生活費として使う金額という位置づけです。
確定拠出年金の掛け金選択枠は、0円から51,000円までの1000円刻みで、この金額 は従業員が自分で選ぶことができます。
仮に従業員が掛け金を3万円とすると、確定拠出年金の掛け金選択枠の金額が3万円 となり、新基本給は27万円となります。   

ここでポイントとなるのが、確定拠出年金の掛け金選択枠に決めた金額は賃金外給与 となり、社会保険料の対象外になるということです。   
つまりこれまでは基本給30万円に対してトータル約15%にも及ぶ社会保険料を企業 は負担していたわけですが、従業員が将来のためにみずから3万円貯金をしただけで、 新基本給27万円となり単純計算で4,500円の社会保険料の企業負担が削減できるというわけです。
ただ、他いくつかの疑問が生まれてきます。
以下にその疑問と回答をいくつか挙げてみましょう。

(1) 基本給が下がるので残業手当の割増賃金が減るのではないか?
  残業手当や賞与の算定の対象となる項目が、「基本給」だった場合には、 新しい給与規程において残業手当の対象とする項目を 「新基本給 + 確定拠出年金掛け金」と変更すればいいのです。
(2) 拠出をしたくない社員もいるのではないか?
  確定拠出年金の掛け金は、51,000円を上限として従業員自ら金額を決めること
が可能です。
当然ゼロ円とする従業員がいても構いません。
その場合は新基本給の額はもともともの基本給の額となるので、手取りも社会 
保険料も従来通りとなります
ポイントは、従業員の意志を尊重できる「選択制」にすることです。
(3) その他 どんな波及効果がありますか?
  確定拠出年金として積立をする金額は、所得税・住民税の対象となりません。
これもかなり大きいのです。
生命保険や年金保険もかけた保険料が所得控除になり節税効果がありますが、
それでも所得控除の対象となる金額に上限が設けられています
でも確定拠出年金の掛け金は、毎月51,000円x12か月=612,000円が全額所
得控除ですので、仮に所得税20%、住民税10%の方なら183,600円の節税ができることになります。
(4) メリットは従業員だけでしょうか?
  加入者は厚生年金加入者ですから、従業員のみならず役員、社長もこのメリットを享受することが可能です。
確定拠出年金は、積立中の利息等に税金がかかりませんし、受取の時には、退職
所得控除という、これもまた大きな税制優遇を受けることができます。
(5) デメリットは全くないのですか?
  社会保険料が少なくなるということは、当然、受け取る際の老齢厚生年金の額に影響してきます。  
例えば3万円を30年積み立てしたとした場合、積立した人としなかった人では、
65歳から受け取る老齢厚生年金におよそ年額6万円ほどの差額が生じます。
老齢厚生年金で考えると確かに65歳以降年間6万円ももらえる金額が少ないのは
痛いです。20年であれば120万円ももらい損です。
それを損したととらえるかどうかは人により考え方は違いますが、その分毎年3
万円別に積み立てている訳ですからね。

この他、いくつかの社内規定の見直し方法があります。詳しくは コンサルティングにてご提案させていただきます。