職業紹介事業の免許取得とその注意点

職業紹介事業とは?

職業紹介とは、職業安定法において、①求人および②求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における③雇用関係の成立を④あっせんすることをいいます。

①求人
 報酬を支払って自己のために他人の労働力の提供を求めること
②求職
 報酬を得るために自己の労働力を提供して職業に就こうとすること
③雇用関係
 報酬を支払って労働力を利用する使用者と、労働力を提供する労働者の間に生じる使用・従属の法律関係
④あっせん
 求人者と求職者との間をとりもって、雇用関係が円滑に成立するように第三者として世話をすること。
職業紹介事業とは?

職業紹介事業の種類

(1)有料職業紹介事業
 職業紹介に関し、手数料又は報酬を受けて行う職業紹介事業
 (例:株式会社、有限会社、個人事業等)
(2)無料職業紹介事業
 職業紹介に関し、いかなる名義でも手数料又は報酬を受けないで行う職業紹介事業
 (例:財団法人、社団法人、NPO法人、学校、商工会議所、地方公共団体等)

職業紹介事業の取扱範囲

(1)有料職業紹介事業
 港湾運送業務、建設業務に就く職業以外の職業
(2)無料職業紹介事業
 すべての職業

職業紹介事業の申請から許可までの流れ

受理月
申請書類の
提出・受理
受理月の翌月
労働局内審査
(実地調査・書類審査)
受理月の翌々月
厚生労働省内審査
労働政策審議会
1日許可
◆例◆
たとえば、4月10日に申請書類が受理された場合、最短でも7月1日の許可通知ということになります。
実施調査は、労働局が指定した日に調査を受けることになるために、実施調査日程の調整が必要な場合には、審査が遅れることになり、許可通知も1か月以上さらに遅れることになります。

申請に必要な手数料について

1事業所あたり5万円(収入印紙)が必要になります。
(複数事業所の同時申請の場合には、2事業所目以降は1事業所当たり1万8千円がさらに必要になります)
また、9万円の登録免許税の納付が必要になります。
(無料職業紹介事業の場合は、収入印紙、登録免許税は発生しません)

申請に必要な添付書類及び許可要件

法人に関する書類

  定款(変更があれば 変更にかかわる株主総会議事録も添付)
  履歴事項全部証明書(なお、事業目的に、「建設業関連」や「港湾運送業務関連」の記載が
  ある場合は、関連業務に職業紹介をしないこと旨の誓約書が必要)

◆主な要件◆
①事業目的に「職業紹介事業」が明記されていること。
②一定の欠格事由に該当しないこと

代表者、役員(監査役を含む)、職業紹介責任者に関する書類

  住民票(本籍地記載のもので、かつ、マイナンバーの記載のないもの)
  履歴書
  職業紹介責任者講習受講証明書
  ※なお職業紹介責任者と役員を兼務する場合は書類は兼用で可
  ※住民票と居所が異なる場合➡居所が確認できるもの(誓約書)
  ※代表者、役員、職業紹介責任者が他の法人の役員を兼務している場合は、その法人の登記
   簿謄本又は定款を添付すること、(あるいは事業目的のわかる会社案内)

◆主な要件◆
①一定の欠格事由に該当しないこと

さらに、職業紹介元責任者については、以下の要件も必要になります。

職業紹介責任者講習を受講したものであること。(許可予定日から遡って5年以内
②法人に雇用されている労働者又は役員(監査役は不可)で、事業所に常駐してその業務に専従できる方を選任すること
3年以上の職業経験を有するものであること(つまり新入社員は不可)
※職業紹介責任者は、事業所ごとに、事業所内で職業紹介に係る業務に従事する者
50人につき1人の選任が必要です。

資産に関する書類

  直近の事業年度における「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」
  納税申告書の「別表1」、「別表4」
   (別表1は、税務署の受付印があるもの 電子申告の場合は税務署の「メール詳細」を添付)
  法人税の納税証明書(その2所得金額用)

※法人設立後決算期を迎えていない場合は、法人設立日の「貸借対照表」のみ

◆主な要件◆
基準資産を以下のように定めます。
基準資産 = 資産総額 - 負債総額 - 繰延資産 - 営業権(のれん)
と定義して、
【原則】
①基準資産が1事業所あたり500万円x有料職業紹介を行う事業所数
②現金預金が1事業所あたり150万円+60万円x(有料職業紹介を行う事業所数-1)

※法人設立後決算期を迎えていない場合は、①②について、資本金のみで判断する。
 (1事業所あたり資本金500万円以上かどうか)

【資産要件を満たさない場合の措置】
資産要件に関する要件をどれか1つでも満たさない場合、追加により資産要件が満たすかを再審査します。
➡中間決算又は月次決算を行い、利害関係のない公認会計士(あるいは監査法人)に監査証明書を発行してもらう。(税理士は不可)
追加書類として、
・中間決算又は月次決算の「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」
・監査証明書
・利害関係のない旨の証明書

事業所に関する書類

  事業所の使用権を証する書類
  ➡事業所を所有する物件の場合:建物の不動産登記事項証明書
  ➡事業所が賃貸物件の場合:賃貸借契約書のコピー
  事業所のレイアウト図
  イス、机、パーティション等まで記入し、職業紹介責任者の席、面談スペース、
  個人情報保管場所(鍵付きキャビネット)を示す。

◆注意事項◆
複数の法人との同居や居住兼用の場合は、賃貸借契約書の契約内容(賃貸目的が事業用になっているか等)や事務所レイアウト等に注意が必要です。
◆居住兼用の場合のサンプルレイアウト図◆

<改善前>

事務所レイアウトA<改善前>

<改善案>

事務所レイアウトB<改善案>
◆改善のポイント◆
Aは、リビング(居住空間)を経由して事務所内に入るため独立性を有しているとは言えません。
Bは、居住空間を経由しないため独立性を有していると解釈できます。
  許可基準
  • プライバシーを保護しつつ求人者または求職者に対応することが可能であること
  • 使用目的が事務所であること
  • 事業所の独立性が保たれていること
  • 個人的秘密を保持し得る構造であること
  • 事業の運営にこのましくない場所にないこと

その他の必要な書類

①手数料表
②個人情報適性管理規程
③業務運営に関する規程
④事業所のレイアウト図
⑤公正採用選考人権啓発推進員選任状況報告
⑥状況に応じてその他の追加書類